公共事業について

平成22年10月8日に閣議決定された地方活性化交付金①(きめ細やかな交付金事業:2500億円・住民生活に光を注ぐ交付金事業:1000億円)の使途をめぐる議論が全国の基礎自治体の庁舎内あるいは議場でなされています。本稿では京都府与謝野町を例にとりながら、その議論を追いかけてみたいと思います。

平成22年与謝野町議会12月定例会が12月6日〜21日までの会期で行われました。追加議案として上程された一般会計補正予算はこの地方交付金(きめ細やかな交付金事業)の使途にかかるものであり、与謝野町の限度額は108,202千円でした。「新たな交付金を創設し、観光地における電線地中化等、地域の活性化ニーズに応じて、きめ細やかな事業を実施できるよう支援を行う。」とあるように、各課から計上されてきた予算と事業内容は所管施設整備等のハード事業(例:消防団車庫改修)です。つまり、水道・電気・道路補修等を請け負う地元業者へ優先して仕事を発注することで、地域でキャッシュが循環することを期待する緊急経済対策です。(12月21日可決)

一方、12月定例会では上程されず3月定例会で上程されることになるもうひとつの地方活性化交付金(住民生活に光を注ぐ交付金事業)は「これまで住民生活にとって大事な分野でありながら、光が十分に当てられてこなかった分野(地方消費者行政、DV対策・自殺予防等の弱者対策・自立支援、知の地域づくり)に対する地方の取組を支援する」とあるように、いわゆるソフト事業にかかるものです。従来より、効果を明確に算定しにくいために行政が思い切った事業を展開できてこなかった分野です。

この地方活性化交付金の使途をめぐる議論に耳を傾けるなかで感じることは、今後、基礎自治体での公共事業のあり方は大きく変化していくだろうということです。今年度に入り、京都府与謝野町でもいくつかの建設会社が倒産していることが象徴的であるように、基礎自治体が必要とするハード事業のパイ自体は減少の一途を辿るばかりです。そして、環境問題等に高い関心が寄せられている昨今の時代趨勢等も鑑みると、社会的意義を明確に示すこともより難しくなっていくことでしょう。くわえて、平成の大合併により全国の基礎自治体の数は3200〜1700に減少しており、合併後全ての新基礎自治体で生じている課題のひとつが旧基礎自治体間の感情的な隔たりです。この課題の解決はソフトな公共事業として目指されるべきことであり、その社会的ニーズは高まるばかりです。

以上、私は旧基礎自治体間の感情的な隔たりの縮減等の「ソフトな公共事業」は施設整備等のハードな公共事業より優先されるべき事業だと考えています。来年3月の京都府与謝野町議会や全国の基礎自治体で、もうひとつの地方活性化交付金(住民生活に光を注ぐ交付金)にかかる補正予算計上がなされます。その事業内容を検証し、今後も議論を続けたいと思いますが、この難関な「ソフトな公共事業」の展開に求められることのひとつは、私たち一人一人が「公共」を再考することではないでしょうか。

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①:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/ →「平成22年12月3日 地方活性化交付金の創設について」