咢堂塾合宿
9月22日、軽井沢町で開催された尾崎行雄記念財団主催咢堂塾の合宿に参加してきました。気持ちの良い気候に恵まれながら参加者の皆さんと地方自治について考えてきました。
長野県は下条村村長の伊藤喜平氏の講演「地方再生ー下條村の取組み」の後、地方議会議員シンポジウム「地方自治の課題と展望」に登壇しました。パネリストは、両角穣氏(前八王子市議会議員)・竹田宜廣氏(川崎市議会議員)・川井清晶氏(松戸市議会議員)・松尾徹郎氏(糸魚川市議会議員)・矢澤江美子氏(八潮市議会議員)・高野恵亮氏(嘉悦大学講師)です。
それぞれの自己紹介と各自治体の取組みなどを紹介したのち、これからの基礎自治体はどうあるべきかという議論に入りました。ぼくは、国家予算の50%を赤字国債の発行に頼り、各自治体も税収増を見込むことはできない財政状況のなか、これまでのようにオカネを使った自治体運営はできません。この状況を大前提としながら、住民全体で「どのような地域社会を創りたいのか」という議論をしていくことが大切だと言う主張をしました。また、イギリスでも同様の視点から、キャメロン首相のもと「大きな社会の構築」という政策プランが実行に移されているので、議論の補足としてその紹介をさせてもらいました。
この「大きな社会の構築」プランにはとても注目しています。その詳細には言及しませんが、宣言文の日本語訳を掲載していきますので、気になる方はぜひお読み下さい。
>>>
「大きな社会の構築」
われわれ保守党-自由民主党連立政権は、強い意志をもって協力することとなった。より多くの権力と機会とを人々の手にするために。
市民、コミュニティそして地方自治体対して、協力して行動し、直面する課題を解決し、そして自分たちが望むような英国を構築するために必要な権限と情報とを手渡したい。
社会、すなわち家族、ネットワーク、近隣地域あるいはコミュニティのように日常生活の多くを形づくっているものが、かつてないほど大きくそして強固であることを望んでいる。人々とコミュニティとが、より多くの権限を与えられ、そしてより多くの責任を果たして初めて、すべての公正と機会均等とを達成することができるのである。
大きな社会の構築は、単に、ひとつやふたつの省庁の責任ではない。それは、政府のすべての省庁の責任であり、そして市民一人一人の責任でもある。政府は、自分たちだけではすべての問題を解決することは不可能である。全員参加が必要である。英国が直面する社会的、政治的、経済的課題に対処するためには、この国全体で人々のスキルや専門性を引き出すことが求められているのである。
この文書は、既に合意された政策の骨子を示すものであり、この政策によりその課題実現の一助となると信じている。今後発表される政府に対する包括的プログラムの最初であり、それにより英国に必要な改革、再生、公正、および変革がもたらされるであろう。
1. コミュニティに対するより多くの権限付与
・計画システムの思い切った改革を行い、地域住民が自分たちの生活の場の形成に対してより多くの決定権限を与える。
・コミュニティに対して、閉鎖の危機に直面している地域の施設やサービスを救済するための新しい権限を導入する。また、コミュニティに対して、地域の公営サービスを引き継ぐために入札する権利を付与する。
・英国全土、とりわけ最荒廃地域において、新世代のコミュニティ・オーガナイザー(まとめ役)を養成し、また近隣グループの形成を支援する。
2. コミュニティでの活動的な役割の奨励
・ボランティア活動や社会活動への参加を奨励するためのさまざまな取り組みを導入する。例えば、全国「ビッグ・ソサエティ・デー」の立ち上げ、あるいは定期的なコミュニティへの参画を公務員評価の主要評価要素にすることなどである。
・寄附やフィランソロピーを奨励するさまざまな取り組みを導入する。
・国家市民サービス局を導入する。さしあたっての最重要プロジェクトは、16歳向けに、活動的で責任ある市民として求められるスキルを開発し、異なるバックグランドを持つ人々と交流し、そしてコミュニティの活動に参加し始めるような機会を提供するプログラムである。
3.中央政府から地方自治体への権限移譲
・地方自治体に対して、大胆な権限移譲、および自治体財政の全面見直しを含むより大きな財政的自律を推進する。
・地方自治体に対して、全面的な権限を付与する。
・地域空間戦略を廃止し、住宅と(地域)計画の意思決定権限を地方自治体に返還する。
4.協同組合、共済組合、チャリティおよび社会的企業の支援
・協同組合、共済組合、チャリティおよび社会的企業の設立と発展を支援し、また、これらの団体が公共サービスの運営により深く参画できるよう支援する。
・公共部門の従事者に対して、労働者所有協同組合を設立し、提供しているサービスを引き継ぐために入札する新しい権利を付与する。これは、何百万もの公共部門の従事者が、自分自身のボスとなり、よりよいサービスを提供することを可能にする。
・休眠中の銀行口座の資金を活用して、ビッグ・ソサエティ・バンクを設立する。これは、近隣グループ、チャリティ、社会的企業、その他の非政府団体に対して新しい資金を提供するものである。
5.政府データの公表
・新しい「データへの権利」を創設する。その結果、一般の人々が政府保有のデータを請求して活用することが可能となり、また定期的に公表されるようになる。
・警察が、地域犯罪にかかわる統計データを毎月公表することを義務付ける。その結果、一般の人々が近隣地域にかかわる正確な犯罪情報を入手し、警察がその活動に責任を持つようにする。