地方自治体の予算編成過程について(2)
前回のエントリーでは、全国の多くの地方自治体が採用している予算編成過程のフローを確認しました。連載第2回目となる本稿では、前回の事例における予算編成過程の問題点を挙げ、それぞれに対応する改善策の事例を紹介していきたいと思います。
1. 透明性
多くの地方自治体の予算編成過程における問題点として第1に挙げることができるのは「透明性の欠如」だと言えるでしょう。全国の地方自治体を対象とした「予算編成過程における透明度調査」などはまだおこなわれていないので、データを参照しながら議論を展開することはできませんが、予算編成過程における予算査定という作業は「密室の秘儀」と言われるほどにブラックボックス化しているのが現状だと理解してもらえればと思います。
事例:島根県浜田市
浜田市では、予算編成作業の透明性を確保することにより、市事業への理解を深めてもらうため、各部局の「予算要求内容と査定結果」と「主要施策の予算要求と査定状況」を公開されています。
平成23年度3月浜田市定例会に提出された当初予算説明資料を見てみると、「予算要求内容と査定結果」では、議会・総務部などの各部局の予算要求と査定結果が、一般経費や義務的経費などの事業別区分に添って整理されています。また、「主要施策の予算要求と査定状況」では、部局別の主要施策23事業について、予算要求の概要・要求事業費・査定事業費・査定概要が記されています。つまり、主要施策においては要求額や査定額だけではなく予算要求や査定の理由がまとめられています。この取組みの結果、次に掲げる2点について成果が見られるのではないかと思います。
①議会における予算質疑の活発化
②財政課の査定に対する態度の変化
2. 住民参画
第2の問題点として挙げることができるのが「住民参画の欠如」だと思います。しかしながら、ここ数年間で予算編成への市民参画を予算編成過程の制度設計に取り入れる地方自治体も増えてきています。その手法も、予算要求・査定段階においてパブリックコメントを募集し、査定結果に反映させる方法や住民が自ら予算編成を行う方法など様々です。それらの成果から、予算編成過程に住民参画という視点を取り入れることの大切さを確認したいと思います。
事例:大阪府狭山市
狭山市では、中学校区を単位として、地域内の自治会や住宅会、NPO、市民活動団体、事業者などが、自主的に一堂に会してまちづくりについて話し合う場を設け、そこでの議論により、合意に達した事業について市に年間500万円までを上限とする予算措置要求することができる制度「まちづくり円卓会議」を進められています。円卓会議による予算の提案は、住民という主体の積極的な予算編成への参画を目的としていると言うことができるでしょう。
2008年度からスタートした予算措置制度は、2011年度にすべての中学校区単位で円卓会議が設けられました。これからの展開に注目していきたいと思いますが、これまでに報告された変化を挙げておきます。
①住民自治に対する意識の高揚
②住民たちが自分たちの地域をじっくりと見るようになったこと
③住民のまちづくりに対する興味が高まったこと
④市民が市行政を理解する機会が増えたこと
前回のエントリーで引いた事例における問題点【透明性の欠如・住民参画の欠如】を挙げて、それぞれに対応している改善策をご紹介させてもらいました。いかがだったでしょうか。連載最終回となる次回は「なぜ予算編成過程が変わらなければいけないのか」という話をしたいと思います。